翻訳家によるコラム「分子生物学・バイオ技術・環境コラム」

高橋翻訳事務所

分子生物学・バイオ技術・環境コラム

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2013/01/17
蝸牛のしくみと人工内耳

生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。

人口の耳は補聴器とは異なり、耳の奥に埋め込んで使う装置で、正しくは人工内耳(cochlear implant)といいます。

音は空中を振動として伝わり、耳の奥になる鼓膜(eardrum)を震わせます。その振動は、3個の小さな骨を介して、内耳(inner ear)と呼ばれる場所に到達します。内耳には、音を神経の電気信号に変える蝸牛(cochlea)という器官があります。

蝸牛は、渡り廊下がぐるぐると渦巻き状になったような構造をしており、外形がカタツムリに似ています。長さは35ミリメートルで、入り口付近が狭く、奥へ行くほど広くなっています。

入力された音は、液体の振動となって基底膜を先端まで伝わります。その間、音の高低(周波数)が廊下の断面積とちょうどマッチしたところで共振現象を起こし、そのエネルギーが有毛細胞を刺激し、電気信号を発信させます。この信号が神経を介して脳に伝えられるというしくみです。

生まれつき耳が不自由な小児や高齢者にとって大きな福音となったのが、蝸牛の機能を代行する人工内耳でした。耳が不自由な人の多くは神経機能が残っているため、音を周波数ごとに分離してやれば聞こえるようになります。

実際の人工内耳は、蝸牛を刺激する電極だけを体内に埋め込み、マイクロフォン、コンピュータ、バッテリーなどは耳に掛けたり、ポケットに入れたりして使います。現在、日本では5000人がこの装置を使っているとのことです。


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