翻訳家によるコラム「"if any"の"any"について」


法律・契約書コラム

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2010/02/06
"if any"の"any"について

契約書翻訳、法律文書翻訳担当の岡田です。

今回は"any"について説明します。

"any"は契約書などの法律文書の翻訳では、一般的に以下のように「いかなる〜も」などの意味で多く用いられています。

"Licensee shall not sublicense any of its rights under this Agreement without the express prior written consent of Licensor."

「ライセンシーは、ライセンサーの書面による明確な事前の承諾を得ない限り、本契約に基づく自己のいかなる権利もサブライセンスしないものとする。」

それでは次の文章はどうでしょうか。

"ABC shall inform XYZ immediately of any infringements of the XYZ's trademarks of which ABC becomes aware."

「ABCはXYZに対して、ABCが知ったXYZの商標のいかなる侵害についても直ちに通知する。」

"ABC shall provide XYZ with a list of customers and immediately notify XYZ of any changes made to it."

「ABCはXYZに対して、顧客リストを提出するものとし、顧客リストについて行われたいかなる変更についても直ちに通知する。」

一般的に上記のように翻訳されると思いますが、なんとなく物足りなく感じませんか?(感じて頂けるとありがたいのですが。)

それではそれぞれ次のような翻訳はどうでしょうか。

「ABCがXYZの商標の侵害を知った場合、ABCはXYZに対して、そのいかなる侵害についても直ちに通知する。」

「ABCはXYZに対して、顧客リストを提出するものとし、顧客リストについて変更が行われた場合は、そのいかなる変更についても直ちに通知する。」

例文の「侵害(any infringements)」と「変更(any changes)」は、いずれも確定的なものではなく不確定なものであり、これは"any"が"if any"と同様に「何々がある場合の何々」という仮定の意味で使用されるパターンです。従って、確定的なものであることを前提とした翻訳については少し違和感を覚えます。このパターンは、契約書では意外とよく登場するので、文脈を理解した上でこのような方法で翻訳したほうが、文章の意味が分かりやすくなると思います。


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