翻訳家によるコラム「単純賭博と常習賭博の違いについて」

高橋翻訳事務所

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2010/06/28
アメリカと日本で違う“賭博”と“ギャンブル”の意味とは?

特急翻訳、ビジネス全般翻訳、技術全般翻訳、音楽翻訳担当の高橋です。

相撲界での野球賭博( baseball gambling )が話題になっていますが、賭博・ギャンブルについての英語を考えてみましょう。

日本では賭博が禁止されているものの、宝くじ( lottery / "Takara-kuji" lottery )、公営ギャンブル( public gamble )、パチンコ (Pachinko) など、一部のギャンブルは認められています。英語では「賭博」も「ギャンブル」も gamble (ギャンブルそのもの)や gambling (ギャンブルをすること)ですが、日本語では「賭博」と言ったときは違法性のあるもの、ギャンブルといったときは違法性のないものといった語感で使い分けられています。

翻訳での「カタカナ言葉のずれ」と呼んでいますが、漢字にした場合とカタカナにした場合で意味合いが変わってくる場合も多いため注意をしながら翻訳をしています。また、日本の法律にはあって、外国の法律にはないというものには、定訳がはっきりしていないものも多く、その場合、言葉を単純に翻訳するのではなく、意味を知った上で翻訳していきます。たとえば、常習賭博(刑法 186 条第 1 項)は habitual gambling という定訳になりますが、単純賭博(刑法 185 条)の場合の「単純」とは、簡単な (simple) ということではなく、「常習性がない」ということなので、定訳としては特に見かけないものの、 nonhabitual gambling という訳語が近いのではないかと思います。

ちなみに、一般に「ギャンブル依存症」と言われ、学術的には「病的賭博」と呼ばれている言葉がありますが、米国精神医学会や WHO が pathological gambling という言葉を使っています。


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